監督プロフィール

新自由主義経済が持ち込まれてから、労働者を守る仕組みが崩壊した。 “個人事業主”“フランチャイズ”という誘い文句で、労働者は「働いただけ儲けは全て自分のものになる」という幻想を植えつけられる。
その挙句働くことをやめられなくなり、家庭や健康といった個人的な基礎が侵されていく。
仕事は家族を守るためのものなのに、現代では家族との時間を奪っているなんてバカげている。ケン・ローチ(第72回カンヌ国際映画祭会見にて)

監督:ケン・ローチ

1936年6月17日、イングランド中部・ウォリックシャー州生まれ。電気工の父と仕立屋の母を両親に持つ。「キャシー・カム・ホーム」(66)で初めてTVドラマを監督、『夜空に星のあるように』(67)で長編映画監督デビューを果たし、『ケス』(69)でカルロヴィヴァリ国際映画祭グランプリを受賞。その後、世界三大映画祭などで高い評価を受け続けている。特にカンヌ国際映画祭では「ブラック・ジャック」(79)、『リフ・ラフ』(91)、『大地と自由』(95)が国際批評家連盟賞を、「ブラック・アジェンダ/隠された真相」(90)、『レイニング・ストーンズ』(93)、『天使の分け前』(12)が審査員賞を受賞。労働者や社会的弱者に寄り添った人間ドラマを描いた作品で知られる。その他、政治的信念を色濃く反映させたドキュメンタリー映画「1945年の精神」(13)などがある。前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)は世界中で賞賛を受け、2016年のカンヌ国際映画祭で『麦の穂をゆらす風』(06)に続く2度目のパルムドールを受賞。同賞の2度の受賞はミヒャエル・ハネケらと並んで最多受賞記録である。前作を最後に引退を宣言していたが、今もなおイギリスや世界中で拡大し続ける格差や貧困の現実を目の当たりにし、今どうしても伝えたい物語として引退を撤回し本作を制作した。

Filmography 主なフィルモグラフィー

1967『夜空に星のあるように』
1969『ケス』
1991『リフ・ラフ』
1993『レイニング・ストーンズ』
1994『レディバード・レディバード』
1995『大地と自由』
1996『カルラの歌』
1998『マイ・ネーム・イズ・ジョー』
2000『ブレッド&ローズ』
2001『ナビゲーター ある鉄道員の物語』
2002『スイート・シクスティーン』
『11’09”01/セプテンバー11』(1エピソード)
2004『やさしくキスをして』
2005『明日へのチケット』(1エピソード)
2006『麦の穂をゆらす風』
●2006 カンヌ国際映画祭 パルムドール
2007『この自由な世界で』
2009『エリックを探して』
2010『ルート・アイリッシュ』
2012『天使の分け前』
2014『ジミー、野を駆ける伝説』
2016『わたしは、ダニエル・ブレイク』
●2016 カンヌ国際映画祭 パルムドール
2019『家族を想うとき』