イントロダクション

「なぜ、やった?」「何を」
85歳の祖父と、13歳の孫娘。
ふたりを惹きつける大きな“秘密”。
ハネケ監督がわたしたちに問いかける問題作。

『白いリボン』と『愛、アムール』で二度にわたって、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールに輝いた名匠ミヒャエル・ハネケ。『愛、アムール』では老境の夫婦ジョルジュとアンヌの愛と死に透明な視線を投げかけ、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。
それから5年、昨年のカンヌ映画祭を衝撃の渦に巻き込んだ『ハッピーエンド』では、フランスの移民問題を象徴する街カレーの瀟洒な邸宅に住まうロラン家を背景に、『愛、アムール』の続きともとれる、新たな愛と死を衝撃的に描く。

ハネケは祖父ジョルジュと疎遠だった孫娘エヴの再会に光を当てる。幼い頃父に捨てられ、愛に飢え、死とSNSの闇に取り憑かれたエヴの閉ざされた扉を、ジョルジュの衝撃の告白がこじ開ける。『ハッピーエンド』は、現代のヨーロッパに“教養あるブルジョワジーはもはや存在しない”ことを炙り出しながら、ディスコミュニケーションの闇が広がる今、孤独な魂の会合が断絶した絆に血が通う瞬間に観客を立ち会わせる。

ジャン=ルイ・トランティニャン、イザベル・ユペール
屈指の実力を持つ名優たち

祖父ジョルジュを演じるのは『愛、アムール』の名優ジャン=ルイ・トランティニャン。ジョルジュの娘役には、『ピアニスト』はじめ、ハネケ作品では常連のイザベル・ユペール。昨年『エル ELLL』でオスカー主演女優賞にもノミネートされ、乗りに乗るユペールがビジネスマンとして辣腕を振るう一方で、エゴイスティックな現代ブルジョワの姿を体現してみせる。トランティニャンとユペールが前作に続いて父と娘を演じるのも見逃せない。ほか、マチュー・カソヴィッツ、トビー・ジョーンズら、ヨーロッパ屈指の実力俳優の饗宴に、ハネケによって抜擢されたファンティーヌ・アルドゥアンがヒロインとして加わった。