判決、ふたつの希望

8月31日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開

監督・脚本:ジアド・ドゥエイリ  脚本:ジョエル・トゥーマ
出演:カメル・エル=バシャ、アデル・カラム
2017年/レバノン・フランス/アラビア語/113分/シネマスコープ/カラー/5.1ch/英題:The Insult/日本語字幕:寺尾次郎/字幕監修:佐野光子
配給:ロングライド
未来のことを考えたら、いま、やるべきことはわかっている。
でも、過去がそれを許さない。
この人類普遍の問題に心を痛める人々に、この映画は希望をもたらすか。
木村草太(憲法学者)
パレスチナの人々の 今の暮らし、日常を初めて見たような気がする
歴史やニュースで知っている重圧が このような形でのしかかっているのか。
久米宏
最後に下される裁判結果に納得できるのかしらと引き込まれ、
辿り着いた結末に感動と共感の涙。
レバノン・パレスチナ問題を「人」に寄り添って描ききった映画だからこそ見えてくる希望に興奮がとまらない。
長野智子(キャスター)
「難民は災厄だ」「極右が難民を語るな」。過激な声が飛び交うこの映画は、だからこそ、レバノンの複雑な国内対立をはるかに超え、偏在するヘイト、排他主義、独善に抗う<相互理解>の可能性を私たちに示してくれた。
金平茂紀(TBS『報道特集』キャスター)
今年観た海外映画の中で最も心を揺さぶられた。内戦が刻み込んだ憎しみの連鎖。何を為すことが共存に繋がるのか。この映画はその答えを模索する過程を悲しく、切なく、温かく描ききった。観るものを選ばない普遍性に監督の巧さをみた。差別の根源を問うこの作品は今、時代が求めていたものであることは間違いない。
堀潤(キャスター/ジャーナリスト)
売り言葉に買い言葉…どこにでもありうることです。鬱屈したものが世界中で溜まっているだけに、演技とは思えないこのリアルな話は万人に観て欲しい。政治家にも自制心を!
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
シンプルな問いから出発する法廷劇が、
世界が直面する複雑な真実を照らしだす。
目まぐるしく変化するライフヒストリー。
審判が下るまで、あなたは何度も
自分の「正義」を問い返すこととなるだろう。
荻上チキ(評論家/TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」パーソナリティ)
レバノン人がパレスチナ人に浴びせたある侮辱の言葉。それをきっかけに発生した傷害事件。本来は平凡な市民同士の些細なトラブルに過ぎなかったものが、法廷を舞台に大きな紛争に発展して行く。「謝罪さえあれば!」と思わずにはいられない。悲劇の裏に潜む社会と個人の歴史。そこに解決の道筋はあるのか。
北村晴男(弁護士)
息をのむ法廷シーンの連続。このプロセスを通じて差し込んでくる希望の光が心に残る。平和の糸口がそこに見えるよう。
住田裕子(弁護士)
私たちは憎しみの連鎖を断ち切ることができるのか。分断が加速するこの世界で、本作はスリリングなドラマを通して熟考を促し、一つの希望を提示する。法廷ドラマの傑作がまた一つ生まれたことを一人の法律家として祝福したい。
水野祐(弁護士)
法は万能ではない。
罪深さを裁ききることはできない。
今あらためて「個人の尊厳とは何か?」を考えさせられました。
この映画はレバノン発,全世界への告発状だと思います。
三輪記子(弁護士)
本心はささいな発言に宿るのだ。
言葉も歴史も裁判のやり方も日本とは違うけど、
人間は何処にいても何時の時代も過去にとらわれる生き物なのは同じということか。
2018年にこういう映画があったことを未来の人に伝えたい。
阿曽山大噴火(裁判傍聴芸人) 


歴史の憎悪が生んだ感情と思想のぶつかり合い、お互い傷つきながら許し合う気持ちは遠ざかる。この映画は私の物の見方を、いや思想までを変えてくれる映画かもしれない。そしてまたひとつ人として成長できた気がする。
フィフィ(タレント)
同じ国で暮らすもの同士が憎しみ合う内戦。
そんな辛く悲しい現実がレバノンにはあった。
傷ついた人生の苦痛や悲劇は誰にとっても同じ。
それを真に理解し、歴史の中を生きて行くことこそが、平和への第一歩なのだ。
増田ユリヤ(ジャーナリスト)
この地で生きる誰しもが、複雑に絡み合う歴史を背負っていた。
それはときに群衆の中、止めどない怒りの渦となり、個々の意思を飛び越えてしまう。
それでも二人は少しずつ、心の距離を縮めた。“一人一人”として向き合うことで。
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
憎しみと暴力の連鎖がどのように始まり、増幅され、制御不能になるのか。本作はその構造を容赦なく描き出す。なのに絶望には陥らず、「和解」というおよそ不可能にすら思える場所への道筋を示すことに成功している。文句なしの傑作。
想田和弘(映画作家)
まったく予備知識なしで観た。そしてやられた。見事に突かれた。
ラストの二人の表情が目に焼きついた。この先もずっと忘れられない映画になった。
森達也(作家/映画監督/明治大学特任教授)
憎しみや争いを、決して善悪やきれいごとで片付けたりしないこの映画の存在そのものが、私には大きな希望に見える
小林エリカ(作家/マンガ家)
“民族の違い”はあまりに大きなテーマだが、主人公ふたりの人生は、もっと複雑で繊細だ。
レバノンの熱気と時代に振り回され、傷ついた両者の心は、歩み寄ることの難しさと美しさを私たちに提示してくれる。
板垣巴留(マンガ家/「BEASTARS」作者)
小さな、けれど重い石を水面に投げるような映画だ。
僕たちはその波紋が広がっていくのを見ながら、「投げられた石」について考えずにはいられない。
紛争や移民の問題が日常の中でどんなふうに潜んでいるのか。
暴力の連鎖を止める何かをこの映画は示そうとしている。
羽賀翔一(マンガ家/「漫画 君たちはどう生きるか」作者)
ささいな口論が「炎上」して国を二分した時、和解をもたらしたのは小さな勇気だった。何が真実かわからない時代、粘り強い対話だけが絡まった縦糸横糸をほぐす。この物語は、私たち自身にとっての希望の光だ。
茂木健一郎(脳科学者)
  "謝罪"を迫る男、それを拒む男。些細な暴言が、忘却の悪夢を呼び覚まし、歴史と民族、宗教、政治を巻き込み、対立の大きな戦火となっていく。
法廷は"紛争"の場になり、裁判は"内戦"と化す。本作は世界に生きる我々人類の過去と未来と今を"認否"させる。
果たして、人は苦痛や悲劇と"和解"できるのか。
映画は"判決"をくださない。答えは、本作を傍聴した観客の"和解"にこそある。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
レバノンのパレスチナ難民とキリスト教徒の二人の男の日常の些細な諍いが、
やがて国を揺るがす騒乱へ発展するという喫驚の法廷劇。
複雑な歴史背景と、脇役達の視座が、作劇に圧倒的厚みを与え、
非戦という選択肢のみ残された次世代の希望が仄かに立ち上る。
幾度も打ち震えた。名作の誕生だ。
中川敬(ミュージシャン/ソウル・フラワー・ユニオン)
まさに「水かけ論」から始まり、3分先が予想できない意外な展開の連続で、国家全土を巻き込む大紛争に。これはレバノン版『スリー・ビルボード』だ!
町山智浩(映画評論家)
よくあるご近所トラブルが国を巻き込んだ大騒動に!大規模な泥試合!そして、予想外のラストに連れて行ってくれる映画です。2人の男が背負う過去と未来に泣かされた!あと、この邦題、素晴らしいな!
赤ペン瀧川(映画コメンテーター)
遠い異国の法廷劇になぜこんなに心が揺さぶられるのか。
それはこの衝突が誰にとっても他人事でないからだ。
過ちを謝罪することは難しく、過ちを赦すことはもっと難しい。
でも希望の光はその困難の先にしかないのだ。
疋田周平(SCREEN編集部 副編集長)
遠い異国の“他人事”じゃない――いつ何時、私たちの身に起こっても不思議ではない“苦難”は、人種・性別・宗教の枠をも超えて、見る者に深く突き刺さる。
映画.com
人の尊厳を尊重することの大切さという人種や国を超えた普遍的なテーマは、
役者の表情の一つ一つからも痛いほどに伝わってくる。遠い国でのささいな
小競り合いではなく、どこにでも誰にでもあり得る問題を驚くほど丁寧に
エンターテインメントとして描いた傑作。
下村麻美(シネマトゥデイ編集長)
引っ込みがつかなくなった2人の男は、
互いの歴史と傷の深さを知り、次第に歩み寄っていく。
彼らの不器用なやりとりが微笑ましく、ラストでは号泣してしまった。
些細な諍いを発端に、思いがけず国家の膿が噴出する展開はお見事!
黛木綿子(映画ナタリー副編集長)
苦しい生活を送る中で右翼に心を寄せる青年と不法就労の難民の小さなトラブルが、SNSなどを通じて炎上し、国家的な問題に。舞台はレバノンだが、日本で起きてもおかしくない普遍性を持つ、社会派の人間ドラマだ。
貫洞欣寛(BuzzFeed Japanニュースエディター)
どちらも正しいし、どちらも間違っている。
正しさを主張する度に広がってしまう傷口を覗き込む。
そもそも、万事に真実なんてあるのだろうか。
武田砂鉄(ライター)
(敬称略・順不同)