かつて大学で映画を教えていたモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)は、今は人生初の小説の執筆に取り組んでいる。映画の広報の妻スー(ジーナ・ガーション)に同行し、サン・セバスチャン映画祭に参加。スーとフランス人監督フィリップ(ルイ・ガレル)の浮気を疑うモートはストレスに苛まれ診療所に赴くはめに。そこで人柄も容姿も魅力的な医師ジョー(エレナ・アナヤ)とめぐり合い、浮気癖のある芸術家の夫(セルジ・ロペス)との結婚生活に悩む彼女への恋心を抱き始めるが…。
主人公モートはサン・セバスチャンを訪れて以来、昼も夜も摩訶不思議なモノクロームの夢を垣間見るようになる。街を散策中、突如フェデリコ・フェリーニ監督『8 1/2』の世界が目の前に!夢の中では、クロード・ルルーシュ監督『男と女』、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手にしやがれ』の世界に自身が出現したり。モートは、いつしか、映画の名作たちの中に、自らの“人生の意味”を探し求め、映画と現実の狭間を迷走していくのだった…。主人公のおかしな人生問答を、アレン自身がこよなく愛するヨーロッパの名作映画を引用したモノクロのイメージで映像化。“ビスケー湾の真珠”と呼ばれる風光明媚なリゾート地の景観をカメラに収めながら、まさしく“映画のように”儚くも美しい人生模様を紡ぎ上げた一作である。 最後にあっと驚くキャストが登場するのもお見逃しなく!
1943年生まれ。アメリカ、ニューヨーク出身。ハーバード大学で歴史を学んだ後、オックスフォード大学で哲学、経済学を学ぶ。1970年代、舞台演出に関わったことをきっかけに国立劇場にて俳優デビュー。ウディ・アレン監督『マンハッタン』(1979)で映画デビューを果たす。アレン作品に多数出演し、『ラジオ・デイズ』(1987)、『ウディ・アレンの影と霧』(1992)、『スコルピオンの恋まじない』(2001)、『メリンダとメリンダ』(2004)などがある。その他の映画作品は、スティーブン・フリアーズ監督『プリック・アップ』(1987)、ロブ・ライナー監督『プリンセス・ブライド・ストーリー』(1987)、エイミー・ヘッカリング監督『クルーレス』(1995)、『トイ・ストーリー』シリーズ(声の出演:レックス)、ノア・バームバック監督『マリッジ・ストーリー』(2019)など。
1962年生まれ。アメリカ、ロサンゼルス出身。これまで50以上の映画に出演しており、歌手、作家としても高い評価を受けている。映画出演作にポール・ヴァーホーヴェン監督『ショーガール』(1995)、ウォシャウスキー監督『バウンド』(1996)、ジョン・ウー監督『フェイス/オフ』(1997)、ポール・オースター監督『ルル・オン・ザ・ブリッジ』(1998)、マイケル・マン監督『インサイダー』(1999)、ヒラリー・スワンク主演の『P.S.アイラブユー』(2007)などがある。テレビでは、「ハウス・オブ・ヴェルサーチ〜モードの王国を甦らせた女」(2013)で伝説的なデザイナー、ドナテラ・ヴェルサーチ役、メラニア・トランプ役で出演する「グッド・ファイト」(2019)などで印象を残している。
1983年生まれ。フランス、パリ出身。2003年にベルナルド・ベルトルッチ監督『ドリーマーズ』に出演し、高く評価される。父であるフィリップ・ガレル監督『恋人たちの失われた革命』(2005)でセザール賞有望若手男優賞を受賞。また映画監督としても活躍し、2022年に監督・脚本・主演を務めた『L’INNOCENT』(原題)ではセザール賞脚本賞を受賞、セザール賞主演男優賞、ルミエール賞主演男優賞、脚本賞など数々の賞にノミネートされた。主な出演作にフィリップ・ガレル監督『愛の残像』(2008)、グザヴィエ・ドラン監督『胸騒ぎの恋人』(2010)、ミシェル・アザナヴィシウス監督『グッバイ!ゴダール』(2017)、ロマン・ポランスキー監督『オフィサー・アンド・スパイ』(2019)、グレタ・ガーウィグ監督『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)など。
1975年生まれ。スペイン、バレンシア出身。マドリードの王立演劇学院で学び、1996年に映画デビュー。フリオ・メデム監督『ローマ、愛の部屋』(2010)でゴヤ賞とスペイン俳優協会賞で最優秀女優賞にノミネート。2011年にはペドロ・アルモドバル監督『私が、生きる肌』で主演し、ゴヤ賞最優秀女優賞を受賞。世界中から注目を浴びる。そのほかの出演作に、ヒュー・ジャックマンと共演した『ヴァン・ヘルシング』(2004)ジュリアン・ムーア主演『美しすぎる母』(2007)、パティ・ジェンキンス監督『ワンダーウーマン』(2017)など。最新主演作に『檻の中』(2022・NETFLIX)。
1965年生まれ。スペイン、バルセロナ出身。演技を学ぶためフランスに移住し、1992年マニュエル・ボワリエ監督『アントニオの恋人』で主演デビュー。2000年ドミニク・モル監督『ハリー、見知らぬ友人』でセザール賞男優賞を受賞した。主な出演作にギレルモ・デル・トロ監督『パンズ・ラビリンス』(2006)、スティーブン・フリアーズ監督『堕天使のパスポート』(2002)、アリーチェ・ロルヴァケル監督『幸福なラザロ』(2018)など。セザール賞を受賞したアニメーション映画『ジュゼップ 戦場の画家』(2020)では主人公の声を担当した。
1956年生まれ。オーストリア、ウィーン出身。2009年のクエンティン・タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』でアカデミー賞、SAG賞、B A F T A賞、ゴールデン・グローブ賞、カンヌ映画祭で数々の賞を受賞した。また、タランティーノ監督『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)では2度目のアカデミー賞男優賞、ゴールデン・グローブ賞助演男優賞を受賞した。そのほかの出演作にテリー・ギリアム監督『ゼロの未来』(2013)、ティム・バートン監督『ビッグ・アイズ』(2014)、サム・メンデス監督『007 スペクター』(2015)、ウェス・アンダーソン監督『フレンチ・ディスパッチ』(2021)など。
1935年、アメリカ、ニューヨーク州出身。1966年『What's Up, Tiger Lily?』で監督デビュー。『アニー・ホール』(77)でアカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞の4部門を受賞。今なお多くの映画ファンに愛される名作である。ほぼ年に1本のペースで作品を撮り続け、『ミッドナイト・イン・パリ』(11)は世界中で大ヒットを記録。アカデミー賞4部門の候補となり、脚本賞を受賞。『ブルージャスミン』(13)では主演女優ケイト・ブランシェットにオスカー像をもたらし、自らも16回目のアカデミー賞脚本賞ノミネート(うち3度受賞)を果たしている。同年ゴールデン・グローブ賞では、長年にわたり映画界に多大な功績を残した人物に贈られるセシル・B・デミル賞を受賞した。近作に『マジック・イン・ムーンライト』(14)、『カフェ・ソサエティ』(16)、『女と男の観覧車』(17)、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(19)など。次回作『Coup de Chance(原題)』はパリでの撮影を終え、公開を控えている。
1940年、イタリア・ローマ出身。イタリア国立映画実験センターで撮影技術を学んだのち、偉大な芸術家たちの作品の研究に数年を費やす。ベルナルド・ベルトルッチ監督に『暗殺のオペラ』(70)、『暗殺の森』(70)の撮影を任され、フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』(79)、『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)にも携わっている。そのほかの主な作品は『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い』(09)、『フラメンコ・フラメンコ』(10)など。『地獄の黙示録』、『レッズ』(81)、『ラストエンペラー』(87)でアカデミー賞撮影賞に3度輝いたほか、数多くの撮影賞や功労賞を受賞。ウディ・アレン監督作品は『カフェ・ソサエティ』、『女と男の観覧車』、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』に続き、本作が4作目である。
黒田香奈恵(バスク地方観光ガイド)
サン・セバスチャンは、北スペインとフランスにまたがるバスク地方のスペイン側に位置する、人口約18万人の街。もともとは小さな港町だったのですが、19世紀後半からはスペイン王室や貴族のリゾート地として栄えていきました。映画の舞台となっているサン・セバスチャン国際映画祭は1953年に誕生し、ヴェネツィア、カンヌ、ベルリンと並ぶ四大映画祭の1つとなり、サン・セバスチャンへ行くのを楽しみにしている俳優や映画監督が数多くいます。そしてこの街を訪れる人々の楽しみは何といっても美食。スターシェフが腕を振るうレストランや、美味しいピンチョスを提供するバルが立ち並ぶサン・セバスチャンは、世界中の美食家たちが集まる食のテーマパークさながら。美しい景色を見ながらの散歩も最高の思い出となり、1度訪れると、また何度も行きたくなってしまう魔法の街。映画を観終わったらサン・セバスチャンへ行きたくなってしまうことでしょう。
「アニー・ホール」「インテリア」「マンハッタン」で既に〈完成〉していたけれど、
やっぱり「カイロの紫のバラ」。
この映画を嫌いな人っていないでしょう。
新作もそれを彷彿とさせますよね。
今度はどんな魔法で我々を酔わせてくれるのか、すごく楽しみ‼
愛する映画1本
『カイロの紫のバラ』
ウディ・アレン監督
スペインの観光地と言えば・・・。
私は映画祭でも有名なサン・セバスチャンを挙げます。
甘くもほろ苦いロマンティックコメディとサン・セバスチャンの美しい風景を、
是非映画館で堪能してみてはいかがでしょうか。
愛する映画1本
もう一つのスペイン、サン・セバスチャンといえば・・・
ジュリアス・エイヴァリー監督
『ヴァチカンのエクソシスト』 でしょう!
まるでアートスクールの学生が初めて撮った映画のようなピュアでキュートな映画愛に満ちているけれど、
されど名匠ウディ・アレン。
捧げられたオマージュのすべてに手腕が光る、可愛くも唸らされる映画でした。
愛する映画1本
『第七の封印』
イングマール・ベルイマン監督
ウディ・アレンが堂々と映画をテーマに映画をこしらえると
「カイロの紫のバラ」や「ミッドナイト・イン・パリ」のようにとんでもないマジックが生まれる。
90歳を目前にしてその次がやって来ることは間違いない。そして初日を待ちましょう!
愛する映画1本
『巴里を追いかけて』
ジャン=シャルル・タケラ監督
待ちに待ったウディの新作。
待たされ過ぎて三回観た。
ついに主役の座に躍り出た常連ウォーレス・ショーンがとてもいい。
ある程度年輪を重ねた人間なら誰でも感じ入るに違いない、ほろ苦く可愛らしい名品。
愛する映画1本
『カイロの紫のバラ』
ウディ・アレン監督
幾つになっても歳をとっても
思春期の自分の心を忘れないウディが大好き。
選曲も台詞も!アイラブウディ♥
愛する映画1本
『マンハッタン』
ウディ・アレン監督
監督自身を投影したような、よく喋り、
よく夢想する主人公の脳内で、
ひとり名作映画祭が開催中。
旅気分と恋愛のすったもんだ、更には偏愛的オマージュまで一度に味わえる、おいし〜い映画でした。
愛する映画1本
『ラ・ジュテ』
クリス・マルケル監督
愛する人への程良き執着と、
俯瞰しながら何事も一旦笑える自分の人生への心意気を持って、
人生を余す所なく満喫したい。
たった一人に向けて書かれた言葉は何よりも強い。
これから先も作家でいたいと、心が熱くなった。
愛する映画1本
『カフェ・ソサエティ』
ウディ・アレン監督
現実と虚構の間を行ったり来たりしながら、
人生の意味を探し求める傑作。
オマージュされた数々の名作への連想が、
うねり曲がる感情の山道へと誘う。
最後に、観るものを幸せにする映画の「奇跡」が待っている。
愛する映画1本
『ミツバチのささやき』
ヴィクトル・エリセ監督