カンヌ国際映画祭パルムドール受賞『ディーパンの闘い』をはじめ数々の名作で世を驚かせてきた、今年70歳を迎える鬼才ジャック・オディアール監督。待望の最新作では、『燃ゆる女の肖像』で一躍世界のトップ監督となったセリーヌ・シアマと、若手注目監督・脚本家レア・ミシウスと共同で脚本を手がけ、大胆さと繊細さを併せ持つ女性のまなざし、そして圧倒的なモノクロの映像美で“新しいパリ”の物語を描き出した。舞台となる13区は、高層住宅が連なる再開発地区で、アジア系移民も多く暮らす。古都のイメージとはまったく違う独創的で活気に満ちた、まさに現代のパリを象徴するエリアだ。このフランス映画界屈指の世代を超えたコラボレーションは大きな話題を呼び、2021年のカンヌ国際映画祭で絶賛、セザール賞では5部門にノミネートされた。
原作は、今最注目の北米のグラフィック・ノベリスト、エイドリアン・トミネの3つの短編。エリック・ロメール『モード家の一夜』における男女の駆け引きや、『マンハッタン』でウディ・アレンが捉えた魅力的な都市の情景にオマージュを捧げながら、オディアールは2021年の13区で愛の在り方について問う。洗練されたモノクロームで映し出す、誰も見たことのなかったパリがここにある。
人はだれも自分のなかに”未知の人”をひそませている。
その”人”と出会い、受け入れていく、
という人生でもっともステキなことが描かれていた。
舞台となっている町も、パリ市内なのにまるで未知の場所!
大竹昭子(作家)
映画館を出て一杯のお酒かお茶を飲みながら、彼らの街で過ごす時間や自分の街で過ごしてきた時間について想いを巡らせたくなる。若手脚本家二人と鬼才監督によって生み出された瑞々しい現代の若者たちの物語。私の一部みたいに生きている。
太田莉菜(モデル・女優)
口では何とでも言えるけれど、目は本当のことしか言えない。口で繋がっても目で隔たる。登場人物たちのそんな目が、ずっと頭から消えない。
尾崎世界観(クリープハイプ)
交差する人々が繋がることが難しくなくなった昨今、でも本当の意味でお互い手を取り合えるようになるのは簡単ではない。どんなに便利な世の中になったとしても、その事実だけは変わらないことを願う。
小谷実由(モデル)
米カートゥーニスト、エイドリアン・トミネの短編コミックを下地に、人の世の狂おしき哀切を抽出した、見事なる都市讃歌だと思いました。浮遊しつつ、ときにお互い「触れ合うこともある」孤独な魂の群舞が愛おしい。
川崎大助(作家)
モノクロ画面の”正直さ”が、主人公たちのままならなさばかりを映して、やがて温かい肌触りを残してきれいに終わる。艶や骨格は全然違うのに、それはまぎれもなく原作であるエイドリアン・トミネのマンガそのものでした!最高!
サヌキナオヤ(イラストレーター/漫画家)
もどかしい恋愛の絶妙なバランスが、巧みに描き出されていました。色彩の不在が、感情の鮮やかさを際立たせ、むしろとてもカラフル。ラストシーンの後、心に小さな花束をもらったような気持ちになりました。
塩塚モエカ(羊文学)
パリで今を生きる登場人物たち。
彼らは、間違った相手をすきだと錯覚したり、きちんと自分の想いを伝えられなかったり、もどかしくて痛々しい恋愛を繰り返す。
だれかと簡単につながれるけど、愛し合うのはむずかしい現代で、愛する人を見つけた彼らは、幸せだと思う。
瀬戸あゆみ(Dear Sisterhoodディレクター/モデル)
コミュニケーションの形は時代で変わっていき
SNSの普及した現代社会でそれぞれ問題を抱えながら
模索して生きていく登場人物達。鉛のように重く美しい
モノクロ映像の中に微かに光る本物っぽい感情に期待してしまう。
たなかみさき(イラストレーター)
誰とでも簡単に出会えるからこそ、真実の愛を見つけるのが難しい時代を生きる私たち。本作が描く新しいパリは、正解を求められる世界の中でも、愛し方愛され方に決まった形はなく、自由に生きることを許してくれる。
DIZ(映画アクティビスト)
行ったことのない場所の、知らない誰かなはずなのに、彼はいつかの私で、彼女はいつかの彼だった。私たちの悩みはいつもほとんど同じで、そういうくだらない人生がただいつまでも続く、美しい世界であってほしい。
長井短(演劇モデル)
愛の形は様々だ。
希薄な人間関係やひょんな会話から生まれるかもしれないし、キスからもセックスからも生まれないかもしれない。
私の思い描く華やかなパリとは違う、13区で暮らす若者達。彼らのリアルな感情の移ろいは、自由な生き方を肯定してくれるような気がした。
人生に正解はないし、失敗もないし、全てが美しくて愛おしい。
人間関係や人との距離を改めて考える今だからこそ 耽美なモノクロームの映像の中で輝く、人との繋がりの温かさを感じられる作品。
フランス映画らしい新しい愛の描き方に心躍りました。
中田クルミ(俳優)
まったく新しいパリのイメージの中で、モノクロで映し出された群像が色鮮やかに輝きはじめたとき、同じような胸の高鳴りを覚えてなんだか走り出したくなりました。
濱田英明(写真家)
モノクロームの中に映し出される13区と若者たちはいびつで未成熟で華やかではないパリの姿なのに、溢れ出るどうしようもない現実的なさみしさがとにかくずっと美しかった。挑戦的で現代的な洗練された傑作でした。
ヒコロヒー(お笑い芸人)
ウィルス、戦争、地震、、
の今の世の中、、
でも希望もあるんだな
ホンマタカシ(写真家)
エイドリアン・トミネのビタースウィートな物語が
モノクロのパリの中で進化した。
優しく、セクシーで、新しい人間模様に胸を打たれた。
山崎まどか(コラムニスト)
30歳前後、恋もセックスも一通り知った彼らの、簡単には割り切れない人間関係や感情がすれちがう。
それでも映画の終盤“本当に人と人が繋がれた瞬間”を見た。それはあまりにも美しく、眩しく…胸を締めつけられる。
山田由梨(劇作家・演出家・俳優)