モロッコ、彼女たちの朝

心の奥にやわらかく触れる、実話から生まれた“始まり”の物語心の奥にやわらかく触れる、実話から生まれた“始まり”の物語
カサブランカの小さなパン屋に訪れた運命を変える出逢いカサブランカの小さなパン屋に訪れた運命を変える出逢い
コメント
8月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。監督・脚本:マリヤム・トゥザニ(長編初監督)出演:ルブナ・アザバル『灼熱の魂』『テルアビブ・オン・ファイア』、ニスリン・エラディ 2019年/モロッコ、フランス、ベルギー/アラビア語/101分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/英題:ADAM/日本語字幕:原田りえ 提供:ニューセレクト、ロングライド 配給:ロングライド8月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。監督・脚本:マリヤム・トゥザニ(長編初監督)出演:ルブナ・アザバル『灼熱の魂』『テルアビブ・オン・ファイア』、ニスリン・エラディ 2019年/モロッコ、フランス、ベルギー/アラビア語/101分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/英題:ADAM/日本語字幕:原田りえ 提供:ニューセレクト、ロングライド 配給:ロングライド
  • 予告編

イントロダクション

INTRODUCTION

日本初公開!モロッコ発の長編劇映画の舞台は、カサブランカのメディナ(旧市街)にある小さなパン屋 出会うはずのなかったふたりは絆を結び、新しい人生へと歩き出す 日本初公開!モロッコ発の長編劇映画の舞台は、カサブランカのメディナ(旧市街)にある小さなパン屋
出会うはずのなかったふたりは絆を結び、新しい人生へと歩き出す

モロッコの異国情緒と甘い香りが包み込む、始まりの物語

地中海に面する北アフリカの「魅惑の国」モロッコから、小さな宝石のような映画が届いた。カサブランカのメディナ(旧市街)で、女手ひとつでパン屋を営むアブラと、その扉をノックした未婚の妊婦サミア。孤独を抱えていたふたりだったが、丁寧に捏ね紡ぐパン作りが心を繋ぎ、やがて互いの人生に光をもたらしてゆく。
モロッコの伝統的なパンや焼き菓子、幾何学模様が美しいインテリアやアラビア音楽が誘う異国情緒とともに、フェルメールやカラヴァッジョといった西洋画家に影響を受けたという質感豊かな色彩と光で、親密なドラマを描き出す。自分らしく生きると決めた彼女たちが迎える朝の景色とは──

女性監督初のアカデミー賞モロッコ代表!
世界の心を掴んだ新しい才能

新星マリヤム・トゥザニ監督が、過去に家族で世話をした未婚の妊婦との思い出をもとに作り上げた長編デビュー作。家父長制の根強いモロッコ社会で女性たちが直面する困難と連帯を、素朴なパン屋の日常に浮かび上がらせる。
本作は2019年のカンヌを皮切りに世界中の映画祭で喝采を浴び、女性監督初のアカデミー賞モロッコ代表に選出。さらに、現在までにアメリカ、フランス、ドイツなど欧米を中心に公開され、ここ日本でも初めて劇場公開されるモロッコの長編劇映画となった。
主演を務めたのは、『灼熱の魂』のルブナ・アザバルと日本初紹介のニスリン・エラディ。アラブやヨーロッパを拠点に活躍する人気女優ふたりが「繊細」「素晴らしい」と絶賛される共演を見せた。製作・共同脚本には、本年度カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に監督作が正式出品された、トゥザニ監督の夫でもあるナビール・アユーシュが参加している。

ストーリー

STORY

臨月のお腹を抱えてカサブランカの路地をさまようサミア。イスラーム社会では未婚の母はタブー。美容師の仕事も住まいも失った。ある晩、路上で眠るサミアを家に招き入れたのは、小さなパン屋を営むアブラだった。アブラは夫の死後、幼い娘のワルダとの生活を守るために、心を閉ざして働き続けてきた。パン作りが得意でおしゃれ好きなサミアの登場は、孤独だった親子の生活に光をもたらす。商売は波に乗り、町中が祭りの興奮に包まれたある日、サミアに陣痛が始まった。生まれ来る子の幸せを願い、養子に出すと覚悟していた彼女だが……。

キャスト

CAST profile

ルブナ・アザバル(アブラ)

Lubna Azabal / Abla

1973年8月15日、ベルギー・ブリュッセル生まれ。ブリュッセル王立音楽院を卒業し、演劇からキャリアをスタート。2005年、ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞作『パラダイス・ナウ』での演技で注目を集める。また、主演を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『灼熱の魂』(10)は世界各国の映画祭で賞を受賞、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。その他の主な出演作に、『愛より強い旅』(04)、『英雄の証明』(11)、『テルアビブ・オン・ファイア』(18)などがある。

ニスリン・エラディ(サミア)

Nisrin Erradi / Samia

1989年8月6日、モロッコ・ラバト生まれ。ラバトの演劇学校に在学中の2011年、『Jnah L'Hwa』でスクリーンデビュー。モロッコを中心に活躍の場を広げ、2019年、カイロ国際映画祭でArab Stars of Tomorrowに選出。2021年には、フランスのセザール賞を主催する映画芸術技術アカデミーが発表した新鋭の若手俳優「Revelations2021」の一人に選ばれた。主な出演作に、短編『Echo』(14)、短編『Hyménée』(16)、『The Women In Block J』(19)などがある。

スタッフ

staff profile

監督・脚本

マリヤム・トゥザニ

MARYAM TOUZANI

1980年、モロッコ・タンジェ生まれ。映画監督、脚本家、女優。本作で長編監督デビュー。
初めて監督を務めた短編映画『When They Slept』(12)は、数多くの国際映画祭で上映され、17の賞を受賞。2015年、2作目となる『アヤは海辺に行く』も同様に注目を集め、カイロ国際映画祭での観客賞をはじめ多くの賞を受賞した。夫であるナビール・アユーシュ監督の代表作『Much Loved』(15) では、脚本と撮影に参加、さらにアユーシュ監督最新作『Razzia』(17) では、脚本の共同執筆に加え主役を演じている。

製作・共同脚本

ナビール・アユーシュ

Nabil Ayouch

1969年、フランス・パリ生まれ、モロッコ系フランス人。北アフリカを代表する映画監督、脚本家、プロデューサー。長編監督デビュー作『Mektoub』(97)をはじめ、『Ali Zaoua, Prince de la rue』(00)、『Horses of God』(12)がアカデミー賞モロッコ代表に選出。カンヌ国際映画祭の監督週間に出品された『Much Loved』(15)は、マラケシュの娼婦たちの日常を描き、モロッコでは上映禁止となる一方、フランスでは28万人の観客を動員した。今年7/6から開催される第74回カンヌ国際映画祭で、コンペティション部門に最新作“Casablanca Beats”が正式出品されている。マリヤム・トゥザニの夫。

Comment

コメント

*敬称略、50音順

宇垣美里(フリーアナウンサー)

伝統のパン、ルジザを作り上げるたおやかな動作に
アイラインを引いた後の1ミリの微笑
言葉よりも雄弁な横顔と瞳の揺らぎで
閉塞的な世界に生きる孤独な2人の女の心情と
心通わせ支え合う過程が繊細に丁寧に描かれていた

枝元なほみ(料理研究家)

偶然出会って、ふと<信じられる>と思う瞬間が訪れる。
女同士が、それぞれの傷や痛みや
優しい柔らかい心や
言葉にできない気持ちの棲む
生きることの<芯>で繋がっていく。
悲しい映画ではないのに何故か泣けてしかたなかった。

大原真樹(ファティマ モロッコ)

モロッコの女性は強くてたくましくて美しい。
厳しい環境を生き抜く術を生まれたときから持ち合わせている。
まだまだ女性の権利は限られているモロッコで、歌って踊って食べておしゃべりして喧嘩して、
人生を生きる力には脱帽するばかりです。

小川歩美(モロッコ料理 エンリケマルエコス オーナーシェフ)

モロッコ人の何気ない日常と、メディナ(旧市街)やモロッコの一般的な家の中の光景。加えて、モロッコの独特な光の加減そのままで撮られているこの作品は、観る人をモロッコにワープさせてくれるでしょう。現地で生活していた時をリアルに思い出させてくれました。

角田光代(小説家)

すべての場面が、それぞれ一枚の絵画のようだ。苦悩を抱き、かなしみを背負っていても、彼女たちの生きる姿はなんとうつくしいのかと驚いてしまう。

瀧波ユカリ(漫画家)

家々の扉、心の扉、そして運命の扉。固く閉ざされているそれらを、互いにノックして開きあう。その難しさと美しさを、祈るようにして見守った。モロッコを彩る光と音と、女たちの手の温もりが今も心に残っている。

中村佑子(映像作家)

女性の権利が制限された社会のなかで、油断すると決壊してしまいそうな感情がある。だから防波線を張って、誰も入ってこないよう閉ざしていた「私」の心に、赤ちゃんを身ごもる「彼女」が入りこんできた。かぎりなく優しい共感をもって。母である前に一人の女性としてどう生きてきたのか。寡黙ななかにたちあがってくる、人が人でしか動かせない感情に涙した。

平田泉(国際NGOプラン・インターナショナル広報チーム)

絵画を切り取ったような美しい映像の中に息づく2人の女性。不当な扱いや差別・偏見に抗って懸命に生きる2人の姿は、同じ思いを抱える世界中の女性たちの姿に重なる。「女の権利は限られている」とつぶやく主人公サミアがラストシーンで歌う詩のように、世界中の女の子たちがあらゆる束縛から放たれて、自由に空を飛べる日が来ることを祈らずにはいられない。

深田晃司(映画監督)

女性への差別や偏見の厳しい現実を背景に、異性により消費されることのない俳優の身体や仕草、その表情が描かれること、ただそれだけでこれほど心地よい時間が流れることに驚かされる。新旧混濁としたモロッコの景観に加え、ザワザワとした街のさざめきがずっと聞いていたくなるほど心地よかった。

風吹ジュン(女優)

命を身籠り産み育む
女性だけの尊い能力!
女の不自由を映したこの作品から
その裏に隠れた
女性と母親だけに与えられた成長と心の解放が見えて来る。

松田青子(作家)

心を閉じ、頑なにならなくては生きてこられなかった二人の女性が、 お互いのこわばった心をほどいていく姿に強く胸を打たれた。
彼女たちがもう苦しまなくていい未来を希求する。
それは日本の私たちが望む未来でもあるからだ。

山内マリコ(作家)

行き場のない妊婦と彼女を受け入れるシングルマザー。連帯する女と女(とその娘)の物語に、こう問いかけられた。あなたにはこれができる? ジェンダーギャップ指数144位の国モロッコから届いた映画に、120位の日本の、ひっそり産み棄て罪に問われる女性たちが重なる。まったく他人事ではない。