「『坊っちゃん』の時代」「遥かな町へ」「孤独のグルメ」など数々の傑作漫画を世に送り出し、2017年にこの世を去った谷口ジロー。この天才漫画家には、生前に実現を待ち望んでいた海外プロジェクトがあった。第11回柴田錬三郎賞に輝いた夢枕獏のベストセラー小説を漫画化した「神々の山嶺」を、フランス映画界が長編アニメーション化する企画である。
もともとフランスで絶大な人気を誇り、2011年にはフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与された谷口は、同国の製作チームのもとを二度訪れ、作画やストーリーの確認に携わっていた。惜しくも完成版を観ることは叶わなかったが、構想から完成まで実に7年を費やした本作は、第74回カンヌ国際映画祭でプレミア上映されたのち、フランスの300以上の劇場で公開され、大ヒットを記録。同国のアカデミー賞にあたるセザール賞では長編アニメーション映画賞を受賞した。
そして日本文化や日本人への深いリスペクトも感じられる本作は、Netflixが一部の国を除く世界配信権を獲得したが、日本では貴重なスクリーン上映による“凱旋”が実現。堀内賢雄(深町誠役)、大塚明夫(羽生丈二役)、逢坂良太(岸文太郎役)、今井麻美(岸涼子役)という豪華声優による日本語吹替版での公開となる。
久住昌之(漫画家『孤独のグルメ』『散歩もの』・音楽家)
驚いた。
谷口さんの絵の「神々の山嶺」は、絶対に映像化できないと思っていました。
しかし、漫画からも独立した、素晴らしいアニメ作品に仕上がっていた。
静かで、険しく、美しい。
音楽の豊かさにも、嫉妬心さえ覚えました。
松本大洋(漫画家『鉄コン筋クリート』『ピンポン』『東京ヒゴロ』)
獏さんと谷口さんという
大きな二つの頂きに挑んだスタッフの心意気を、ひしひしと感じました。
エベレストと東京を描く色彩がとても美しく、クライマーたちは物悲しく格好良かった。
東野幸治(芸人)
名作「神々の山嶺」がなんとアニメ映画化!
そこには山に取り憑かれた漢たちがしっかりと描かれていました!
映画の終盤からは漢たちの息遣いに耳を傾け無事を祈りましょう!
皆さんも私と同じ選ばれし目撃者になりましょう!
西村瑞樹 (バイきんぐ/芸人)
登攀シーンでは思わず息を呑むような場面もあり、張り詰めた緊張感によってどんどん作品に引き込まれていった。
山に取り憑かれた男を突き動かすものは一体何なのか?全てを背負い込んでひたすら進む姿に心を打たれた。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
人は何故、山に登り続けるのか?何故、物創りを続けるのか?
本作はその答えを暗示するだけでなく、映画界における挑戦でもある。雪山登攀の過酷さ、危うさ、美しさの再現は、小説や漫画とは違い、実写映画では難しいからだ。
そんな中、フランス映画界のクリエーター達が“アニメーション”という新たな登攀ルートで、「神々の山嶺」という北壁の登頂に成功した!
これは快挙だ!原作ファンとしても感無量!
石塚真一(漫画家『岳 みんなの山』『BLUE GIANT』)
谷口ジロー、夢枕獏両氏の「神々の山嶺」は、
フランスでこんなにも愛されているのだなあ、と感じる圧倒の映像でした。
何度も歯を食いしばった。
そして、孤高の美しさにグッときた。
ありがとうフランス!!
坂本眞一(漫画家『孤高の人』『イノサン』『#DRCL(連載中)』)
小説によって言語化され、漫画によって可視化された8000メートル峰の凍りつくような死の恐怖を、アニメーションならではの手法で否が応にも「体感」させられてしまう映画。
生命の存在すら許さない神々の領域への挑戦はあまりに絶望的だ。
この世の全てを擲ち、雪煙舞う山頂を目指す挑戦者達の鋭い眼光が僕を睨みつける。
「お前は何の為に生きているのか」と。
しろ(イラストレーター・漫画家/『ヤマノススメ』『カメラはじめてもいいですか?』)
鬼スラ、グランド・ジョラス、エヴェレスト・・・挑む山の魅力を教えてくれたのはこの作品でした。
それが長い年月を経てまさかのアニメ映画化、あの長大で重厚な物語をスマートにまとめあげ 山岳の魅力を凝縮した素晴らしい作品へと変化を遂げていました。
肉のきしむような生々しい、それと同時に詩的にも感じる美しい迫真の映像、是非ご覧ください!
平尾隆之(アニメーション演出・監督『映画大好きポンポさん』)
何故登るのか。何故追うのか。その先に何があるのか。
雄々しくも儚き人の夢と、美しくも残酷な神々の山嶺。
美しく計算しつくされた光と影、色、構図。
いっぺんの無駄無く構築された言葉、演出。
写実とも違うアニメーションの魅力によって描き出された物語に、気付けば心を奪われていました。
見事頂きに登り詰め、この映画を作り上げた全スタッフに敬意を表します。
夏目房之介(フリーライター、マンガ批評家)
夢枕獏、谷口ジローの傑作『神々の山嶺』のアニメーション化である。が、それを意識しないでいいと思う。圧倒的な雪山描写と淡々と刻まれる手や足の演出。私は飽きずに惹きこまれた。高所恐怖にも少しなったぞ。
辰野勇(モンベルグループ代表・登山家)
物語は、マロリー遭難のミステリー究明に端を発し、抑えきれない登山家の冒険心や葛藤が見事に描かれた作品です。更に、アニメの特性を発揮して登攀の細部など、山岳専門家の観賞にも答える臨場感あふれる作品でもあります。
佐渡島庸平(編集者・株式会社コルク代表)
夢枕獏作品、谷口ジロー作品が持っていた男たちの山へと賭ける生き様、ドラマの緊張感が、フランスアニメ映画でも、しっかりと再現されていた。
谷口さんが生きていたら、きっと観て、感動しただろう。