INTRODUCTION







〈アダマン〉の日々をそっと見つめる眼差しは、人々の語らう言葉や表情の奥に隠れされたその人そのものに触れていく。そして、深刻な心の問題やトラウマを抱えた人々にも、素晴らしい創造性があり、お互いの違いを認め共に生きることの豊かさを観るものに伝えてくれる。本作は、間違いなく最も「優しい」映画であり、この時代が次に目指したいと願った“希望”そのものである。

DIRECTOR

ニコラ・フィリベール
Nicolas Philibert
「指導者の声」(未)
「重役たち/テレビジョン」(未)
1985
「カマンベールの北壁」
「クリストフ」
1986
「不安はない」(未)
1987
「たった1人のトリロジー」
「偉業の準備」(未)
1988
「行け、ラベビー!」
「バケのカムバック」
1990
『パリ・ルーヴル美術館の秘密』
ヨーロッパ賞年間最優秀ドキュメンタリー
パリニリール映画祭インターメディア大賞
1991
「重役たち78〜91」(未)
1992
『音のない世界で』
ポポリ映画祭グランプリ
ベルフォール映画祭グランプリ
ボンベイ国際映画祭グランプリ
1994
「動物、動物たち」
ボポリ映画祭最優秀ドキュメンタリー研究映画賞
オコメディア環境映画祭最優秀自然映画賞
サンフランシスコ国際映画祭ゴールデン・ゲイト賞
「アナグマの役割」(未)
「ある建物のメタモルフォーズ」(未)
「家族の背像」(未)
1996
『すべての些細な事柄』
1998
「僕たちの舞台」
2002
『ぼくの好きな先生』
カンヌ国際映画祭正式出品
ヨーロピアン・フィルム・アワード最優秀ドキュメンタリー賞
ルイ・デリュック賞
バリャドリッド国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞
セザール賞最優秀編集賞
フランス映画批評家協会賞年間最優秀映画賞
全米映画批評家協会賞ノンフィクション映画賞
2007
『かつて、ノルマンディーで』
カンヌ国際映画祭正式出品
2010
「LA NUIT TOMBE SUR LA MÉNAGERIE」 (原題・未)
「ネネット」
リバーラン国際映画祭ドキュメンタリー部門最優秀監督賞
2012
「LA MAISON DE LA RADIO」(原題・未)
2018
『人生、ただいま修行中』
※『』劇場公開作品 「」映画祭上映 (未)日本未公開作
COMMENT
<順不同・敬称略>
ミニシアター関係者から、希望に満ちた本作に応援&激賞の声!
こんな素敵な環境の素晴らしい場所があるなんて!
個性的で才能と魅力にあふれた人々が通うデイケアセンター“アダマン号”。
苦しみながらも個々が自身と向き合いながら過ごし、
自身の考えを伝えあう姿に、改めて話し合いや環境の大切さを感じることができました。
浦野洋子
一日のはじまり、珈琲と会話、音楽に集う人たち。
ゆらゆらと凪いだ水面とそこに流れる温かな時間が
優しく包み込んでくれる、豊さと希望に満ちた映画。
誰もが主役になれる場所、セーヌ川のほとりからアダマン号に乗って。
小川賢人
この映画じたい、ステキな余白のような映画だと思いました。
なにかを生み出すためには、自分のなかに余白が必要なんだ!
だれだって、いつだって、創造性を発揮することができるんだ。
そして、尊重しあうことができるんだ。
蔵本健太郎
とても美しい船、アダマン号に来る人々は、みんな個性豊かで、どこか惹かれる人たちばかり。
それにスタッフも素晴らしい。皆で話し合うことで、お互いを理解し、自分自身を理解する。本当に素敵なところだと思った。
小原龍典
ここには日々の忙しさで見えなくなってしまったやさしさや思いやりが溢れている。みんなと一緒だから間違えることも楽しい。そんな居場所がセーヌ川に浮かんでる。もしもアダマン号に乗れたら何をしようかな。
瀧川佳典
旅するアダマン号、只今セーヌ川に停泊中!
地続きのような橋を渡って木造の船の中へ。
ひさしをあげると、船内には日差しが入ってきて、鳥たちの声が聞こえてくる。
ひとり、またひとりと住人たちがやってくる。
ここで過ごす時間は色とりどり。さまざまな言葉がかさなりぶつかり、
川の流れようようにピアノが踊り歌いだす。
どこでもないどこかへ、ここは別天地。
体に、心に、余白を作るってこういうことなのかなって思う。
トラベリング10周年イベントでは、アダマン号で観る
「81/2」「アメリカの夜」キアロスタミ監督「オリーブの林をぬけて」、
その後の会話が楽しそう。
中島ひろみ
オープニングからグッと心をわし掴みにされました。
セーヌ川に浮かぶアダマン号に乗って(私達もスクリーン上で一緒に)
ゆらゆら水面と一緒に心も揺れ動く。
穏やかに、そしてそれだけではなかったり。
フィリベール監督、好きです!!!!
野田
一人一人の世界観を尊重しながら、一つの船をみんなが居場所にしている。アダマン号の暖かな時間は、分断と孤立の時代を繋ぎ直すヒントを与えてくれる気がします。
八重尾 知史
これまで一度も聞いたことがない『アダマン号』、そのドキュメンタリー映画が金熊賞?なぜ?という気持ちで観始めたが、観終わったら受賞に納得できる作品でした。この時代の日本にもふさわしいドキュメンタリー映画です。
本多行彦
エッセイスト
「セーヌ川に浮かぶデイケアセンターの船」
まるでおとぎ話の舞台のようなほんとうの話。
このフィルムが、ある日常を映し出しているという紛れもない奇跡に、生きることの根っ子を見る。
私と私じゃない人の境目は幻想だということも。
ニコラ・フィリベール監督の平らかな眼差しに、ただ ただ感服する。
俳優
議論を重ねて権利を勝ち取ってきたこの国に於いては、
留まるのではなく、常に流れる水の上でこそ
自由に漂うことができるのかもしれない。
セーヌ川に浮かぶアダマン号に集い、話し合う様は、尊い、と思った。
詩人
面白い!リアルでメチャクチャ面白い!日本が製作に参加してるのが誇らしい。
編集者・医学書院「シリーズ ケアをひらく」
登場する一人一人が怪しすぎて見惚れてしまう。
瞼のようなブラインドが開いてセーヌの川面が光り、鉄橋を渡る列車の音がぼんやり響く。
なんて贅沢なアダマン号。
さあ、ブルシットジョブを捨てて乗船しよう!
映画作家
アダマン号、誰もが自然体になれそうな、心地良さそうな空間だなあ。
フィリベール監督らが散歩のついでにぶらりと立ち寄ったような、てらいのない描き方も素晴らしい。
デイケアも映画も、これでいいんだよな。
当たり前のことを、当たり前にやればいいんだ。
クシノテラス主宰
こころの病を抱える人たちが集うデイケアセンター<アダマン号>。
そこに行けば「仲間」がいる。
ここで互いに語り合い、表現し合うことが治癒へと繋がっていく。
薬だけに頼らない「社会的処方」の素晴らしい実践が、ここにある。
憲法学者
なんて多彩な人たちなのだろう。
その声、その眼差し、仕草、紡がれる言葉、そしてメロディーに魅せられた。
船の窓が開く姿も、たまらなく良い。
映画監督
この映画は2回見たほうがいい。1回ではこの作者の思いが的確に伝わらないかもしれない。
それくらい対象に対する抑制された、上品な監督の態度があるということだ。
脳科学者
映画を通して、一人ひとりの姿がくっきりと浮かぶ奇跡。
自分のユニークな価値すらわからない時代に、私たちはどう「個性」に向き合うべきなのだろう。
「アダマン号」に乗れば、人間そのものにたどり着ける。
ライター、編集者
アダマン号に敷かれたルール、それは、他者を尊重し境界線は曖昧なままにしておくこと。
そのルールに則り、ニコラ・フィリベール監督は最大限の慎みと敬意を持って人々を映しとる。
この美しく気高い場所が世界にありつづけることを、心から願う。
写真家
その人らしくあるために、地上から少しだけ切り離された場所に、ゆらゆらと流れる時間がある。
おだやかなセーヌ川から反射する光が、完璧じゃない私たちを明るく照らしてくれる。
医学史・英文学研究者
近くを電車が走る、川に浮かぶ船。一見どこにでもある風景だが、この船はデイケアセンターで精神疾患のある人々が迎え入れられる優しい場所だった。病の苦しみ、世間の偏見、家族との不仲、別離…。深く傷ついた人たちだからこそ、互いに優しさを差し向けることができるのかもしれない。歌、映画、ダンス、そしてコーヒー。繰り返される日常のなかで詩が生まれる瞬間に立ちあえる。そんな芸術と現実の境界を軽やかに越えてしまう映画があるんだと感動した。生きづらさが増す今だからこそ観てほしい…
精神科医 など
「誰も自分自身を手放すべきじゃない」
「人は完ぺきじゃない」
作中に歌われるこんな歌詞たちが、心身にとてつもなく響きました。
人生には苦しみはつきもの。でもきっと苦しみだけじゃない。
安全と安心。寄り合える場。自由で素敵な芸術とユーモア。
誰にとってもアダマン号は必要! って思いました。